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鬼とノブ



勝蔵、と手招きされ顔を寄せる。
いつも見上げていては首が痛いと言うので、屈んでやる。面倒なときは、主君のほうを抱き上げて自分の目線に合わせることもあった。

寄せれば、何か言っている。
この前の出陣のことか、これからの出陣のことか、戦に関係ない与太話なのかは分からない。鈴のような声は鼓膜に響いているが、思考には届かなかった。

思考は今、聴覚より嗅覚に集中している。屈んだとき、抱き上げたとき、触れられたとき、目の前の人物から香ってくる。
 
火薬、血、涙、汗、冷や汗。
死んでから妙に敏感になった五感では、それが何のにおいか、ほぼ分かっているが。どういうにおいなのか、と考えていた。
それらはもちろん戦の匂いで、どんな死線を潜ってきたのかという想像は楽しくはあるが、己が戦場に出た時ほど高揚するものではない。

これは自分にとってどういうにおいか。
五感は鋭くなったくせに、思考は生前より霞がかっている気がする。

母の腕の香りも、父の背のにおいも、もう覚えてはいない。思い出せないのか、それともそんなものほとんど嗅いでこなかったのか。とにかく思い出せないということは、別物ということだろう。


高揚しないが、気が落ち着く匂いでもないことは確かだ。

まあ、なんだっていい。

いい匂いだ。
crophanabiFTHG1450.jpg

★★★
管理人:いさと ///(とても嬉しい)
blueskyはイラストUPないです。
活動ジャンルは
再燃→再燃→新規→再燃→新規→再燃→...
くらいの周期なので何事も継続を期待しないでください。自分のピーク時に解釈描ききった!と思ったらもう描くものないな〜と凪に入るタイプです。

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