UPDATE

鬼とノブ



勝蔵、と手招きされ顔を寄せる。
いつも見上げていては首が痛いと言うので、屈んでやる。面倒なときは、主君のほうを抱き上げて自分の目線に合わせることもあった。

寄せれば、何か言っている。
この前の出陣のことか、これからの出陣のことか、戦に関係ない与太話なのかは分からない。鈴のような声は鼓膜に響いているが、思考には届かなかった。

思考は今、聴覚より嗅覚に集中している。屈んだとき、抱き上げたとき、触れられたとき、目の前の人物から香ってくる。
 
火薬、血、涙、汗、冷や汗。
死んでから妙に敏感になった五感では、それが何のにおいか、ほぼ分かっているが。どういうにおいなのか、と考えていた。
それらはもちろん戦の匂いで、どんな死線を潜ってきたのかという想像は楽しくはあるが、己が戦場に出た時ほど高揚するものではない。

これは自分にとってどういうにおいか。
五感は鋭くなったくせに、思考は生前より霞がかっている気がする。

母の腕の香りも、父の背のにおいも、もう覚えてはいない。思い出せないのか、それともそんなものほとんど嗅いでこなかったのか。とにかく思い出せないということは、別物ということだろう。


高揚しないが、気が落ち着く匂いでもないことは確かだ。

まあ、なんだっていい。

いい匂いだ。
crophanabiFTHG1450.jpg

ショート・メッセージ
cropMIYAKO85_amanogawatentai20140725.jpg

『よぉエックス。成層圏に出て来いよ!』

エクスデバイザーの液晶に光の紋様が映し出される。
点滅と振動を伴ったそれに相棒も気づいたようだ。
ピンポイントにどうやったんだ?とか、おれにはエックスの名前のところしか読めないや、とか、返信できる?とか。

「でも、誰が送ってきたかは分かるな」

ああ、まったく。こんなことをするのは、そもそも可能なのは、彼しかいない。文面でも分かるが。
名前より後に書いてあることを読み上げて「ちょっと行ってくる」とため息混じりに言えば、

「ゼロによろしく」

と大地が笑った。


××××


「おう、来たか」
「来たか、じゃないぞ。来るしかないだろう?私からは返事ができないんだから」
「んだよ、こっちのウルトラサインは教えただろ?」
「君の教えてくれた言葉遣いはどうも私には合わないな。今度改めて光の国のサインを学びたいものだ」
「ウワー相変わらずかってぇヤツ…」

この宇宙のウルトラマン――エックスは顔を合わせて早々に小言を並べる。言葉遣いはほっとけよ。
直接出向くことも考えたが、割り込めばまたうるさいだろうとサインを送ったのだ。結果は変わらなかったけど。

「何か事件か?」
「いや、もう解決した。でまあ、久しぶりにこっちの宇宙に来たからちょっとな」
「なんだ…言ってくれれば手伝ったのに」
「地球もポコポコ怪獣出てんだろ?そっち優先してろって」
「Xioは優秀だ。近頃は私抜きで解決することもある。もちろん地球は優先するが…」

便利な通信手段があるなら、一度相談してくれてもいいんじゃないか?
エックスが手を差し出して提案する。
オレは後ろにゆっくり宙返りしながら伸びをした。

「ま、オレはお前らより超〜強いからなぁ!大抵のこたぁ一人で十分なンだよ」

宙空でリラックスしたまま見返してみれば、直立のまま顎に手を当てて黙っていた。やべ、変なスイッチ押しちまったかな。こいつ結構負けず嫌いなんだった。しかもちょっとめんどくさい。拳で来るならいいけど数字とか出してきそう。

「おい、」
「ゼロ、君は確かに私より強い」
「へっ?」

顔を上げたエックスの素直な言葉に、間の抜けた声が出た。

「自分で言っただろう。君は強い。聞けばまた新しい力も得たそうじゃないか?いつまでも主役だな」
「なんっか引っかかるな!?つか誰に聞いたんだよ」
「星の噂さ」

皮肉なのかただの感想なのか。

「とにかく…ゼロには勝てないかもしれないが、平和を守る強さはあるつもりだ。私はそれで十分だと思う」

変わらないトーンでエックスは話を続ける。掌に地球を包み込むようにして。

「いっちょまえ言うじゃねえか」
「こら、茶化すな」
「たまに年上っぽいよな、たまに」
「だから私は君よりお兄さんだ」

力を追い求める気持ちが暴走すればどうなるのかはよく知っている。たとえそれが平和の為であっても――いや、求めるうちに目的が変わってしまうこともあるということも。
そんな迷いも危うさもない目の前のウルトラマンは、自分より少しだけ、大人に見える。

「君個人が誰かに助けを求めたことはあるか?」
「あ……るだろ、そりゃ」

あったかな。

「…なら、次は私にも声をかけてくれ、ゼロ。絶対に足手まといにはならないさ」

少し詰まった返事を見透かされた気がしてバツが悪い。

「…わーったよ」
「まったく、図々しいくせに何でも一人でやろうとするな」
「ずっ…ていうかなんでオレお前に説教されてんだよ!?」
「そもそも君が理由なく呼び出したんだろう?」
「確かに…っていやオレはお前と大地がちゃんとやってるか様子を見にだな…!」
「またその先輩風か!」
「先輩だろぉ!?」

エックスの余計な一言に、真面目っぽい話は宇宙の果てに飛んでった。そもそも本当にきみのほうが強いのか?インチキじみたキラキラアーマーとか全部無しルールなら私だって結構やるぞ!と話題を最初の方までシャイニングしてくる。誰がインチキだお前なんかゲーミングウルトラマンだろうが。

「っだーもう!じゃあ今度似たようなことあったら連絡すっから!じゃあな!」
「ああ。行けたら行く」
「来ねえヤツじゃん!」

冗談だと真顔で言うエックスの胸にドロップキックをブチかます。早く相棒のとこに戻っちまえ、と笑ってこの宇宙と別れた。


××××


「おかえり、エックス」
『ただいま…大地…』

胸を抑えて応える。液晶にその身振りが映ることはなかったが、私がダメージを受けて帰ってきたことは

『ウルトラマンエックス解析中…不調・疲労』

伝わったようだ。

「何?喧嘩?」
『いや、喧嘩ではないような…なんで私は蹴られたんだ?』
「知らないよ…」
『なぁ、大地。いつも私を助けてくれてありがとう』
「今度は何?変なエックス。お互い様だろ?」

遥かなる友人の「ちょっと手伝えよ」の声を聞ける日が、いつか来るだろうか。

2023
F7VVlR_bwAAmmQv.jpg
F7j0yZ6bYAAygdK.jpg GCrf6oybEAAHYZL.jpg
Fa7eRaWVsAEktVs.jpg Fov-ujbaQAAj7zj.jpg F1KEgCxaEAEOaNV.jpg F3a5MbBbkAApxVa.jpg F3lCKrPasAA-54V.jpg
FYG8mvQagAAyRP_.jpg

古いの
ゴカム
351.jpg
吸死
1sa102020721.jpg 1sa102020722.jpg 1sa102020723.jpg 1sa102020726.jpg 1sa102020727.jpg 1sa102020728.jpg 1sa102020729.jpg
封神演義
232.jpg 119.jpg 47.jpg
魔探偵ロキ
MK5.jpg 0.png 047.jpg 108.jpg 0112.jpg 067.jpg 078.jpg 086.jpg 126.jpg
バディファイト
BF0.jpg 0010.jpg 109.jpg 233.jpg

さらにいろいろ
120.jpg GHS2.jpg 1sa1020211127.jpg 0211.jpg 039.jpg 048.jpg 0510.jpg 087.jpg 030.jpg 127.jpg 64.jpg

1sa102020730.jpg 143.jpg 20240514192026-admin.jpg 068.jpg 088.jpg 173.jpg 182.jpg 192.jpg 202.jpg 222.jpg 261.jpg 27.jpg 28.jpg 29.jpg 30.jpg 311.jpg
210.jpg 48.jpg

02.jpg 14.jpg 16.jpg 00.jpg
ホイッスル
01.jpg 22.jpg 31.jpg

FGO

066.jpg
009.jpg 0210.jpg 045.jpg 059.jpg 077.jpg 098.jpg 191.jpg 201.jpg 204.jpg 205.jpg

すべての元凶はコハエース

亜種の中でガウェインがプロト我が王推しでランスロットがオルタ我が王推しなの好き
038.jpg 046.jpg
20240516135800-admin.jpg

★バグフォン
1sa1020211131.jpg
1sa1020211130.jpg 0111.jpg 029.jpg 118.jpg 46.jpg 55.jpg 63.jpg 71.jpg 037.jpg 044.jpg 057.jpg 065.jpg 076.jpg 085.jpg 097.jpg 058.jpg
20250423224710-admin.jpg

★レイキリ
 45.jpg056.jpg 064.jpg 107.jpg 020.jpg 117.jpg

★★★
管理人:いさと ///(とても嬉しい)
blueskyはイラストUPないです。
活動ジャンルは
再燃→再燃→新規→再燃→新規→再燃→...
くらいの周期なので何事も継続を期待しないでください。自分のピーク時に解釈描ききった!と思ったらもう描くものないな〜と凪に入るタイプです。

🐾は「いいね」「見ました」ボタンです。